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Insights2026年04月07日
【連載】LEADERS SESSION~トップが語るリテールの明日~

ダイヤモンド・チェーンストア 編集長 雪元史章氏と語るリテール業界の明日

# 小売# トレードマーケティング# ショッパーマーケティング# リテールDX# マーケットトレンド
ダイヤモンド・チェーンストア 編集長 雪元史章氏と語るリテール業界の明日

人口減少、業界再編、そしてAIの台頭・・・
日本のリテール業界は今、まさに“未曾有の速さ”で変化の渦中にあります。

いったい何が変わり、何が変わらないのか?

リテール業界/マーケティング業界のトップランナーとフェズ代表の赤尾が「リテール産業の明日」を語り合う連載企画。
第2回目は、流通・小売業界専門メディア「ダイヤモンド・チェーンストア」編集長の雪元史章氏との対談をお届けします。

加速する業界再編とDX、小売業は“アジャイルな変化”が求められるフェーズへ

―直近1〜2年で感じる国内のリテール業界の変化とその背景をどう捉えていらっしゃいますか?

雪元:小売業界は、これまでの歴史の中で、常に変化し続けてきた産業です。ただ、ここ数年は、そのスピードが明らかに速まっていると感じています。

要因の1つは、社会環境の変化です。特に、人口減少、少子高齢化、地方の過疎化、そして都心部への一極集中が小売業に与える影響は年々大きくなっています。

一方で、日本は世界的に見ても小売業の企業数が非常に多い。多様な食文化を背景に地域ごとに様々な企業が存在してきましたが、縮小マーケットでビジネスを成立させるのは大変です。結果として、イオンさんやセブン&アイさんのような大きなグループに収斂されていく「合従連衡」の流れが続いています。

コンビニ業界ではすでに大手3社でシェアのほとんどを占有しており、ドラッグストア業界も同様の動きが進んでいます。食品スーパーはまだ顔ぶれが多様ですが、トライアルさんによる西友さんの買収やイオンさんをはじめとするグループ再編の活発化などにより、勢力図は大きく、そして速く変わっています。

もう1つは、DX、特にAIを軸にしたビジネスモデルの変化が徐々に起き始めている点です。日本の場合はバックオフィスから変わってきていますが、次第に店頭や顧客接点にもAI活用が進んでいます。小売業は、まさにアジャイルな変化を求められるフェーズに入っていると感じますね。

人口減少が進む中、グローバル展開での勝ち筋は?

赤尾:人口減少というファクトがある中で、日本の小売業がグローバルに出ていくときの強みはあるのでしょうか。日本食という価値はありますが、それ以外ではどうでしょう。

雪元:小売業のグローバル展開は決して簡単ではありません。グローバルで成功している日本の小売業は、ファーストリテイリングさんや大創産業さんなど一部に限られます。大手スーパーなどもアジアを中心に展開していますが、その資本力を持ってしてもスケールさせるのは一筋縄ではいかないようです。

特に食品小売は難しい。現地の商習慣に則って安定的な食品のサプライチェーンを構築するには時間がかかります。「日本」というブランドを打ち出すにしても、いくら日本食ブームとはいえ、海外の家庭で日本食を作って食べるというニーズはまだ限定的です。結局、外食産業や駐在員向けのビジネスになりがちです。

一方で、ファーストリテイリングさんのような衣料品や、大創産業さんのような日用雑貨は、日本のクオリティやアイデア商品といった価値が現地の方に受け入れられています。

やはり、日本のやり方をそのまま海外に持ち込んでもうまくいきません。本格的に展開していく場合、現地の商習慣やニーズにしっかりと対応した品揃え、MD、顧客サービスを構築していく必要があると見ています。

エージェンティックコマースの登場、日本の小売業はどう動く?

赤尾:AIの活用について、バックオフィス側と、店頭でお客様と向き合うエージェント側、それぞれどういった時間軸で、どの部分から浸透してくるとお考えですか。

雪元:バックオフィスでは、大手を中心にAIを活用した自動発注などがすでに行われています。トライアルさんでは、AIカメラで惣菜の在庫を分析し、自動で値下げを行うといった先進的な取り組みもありますね。従業員が値札を貼り替えることなく、時間帯や在庫に応じて自動的に値引き作業を完了できるというものです。

ただ、全体で見ると、小売業の現場でのAI活用はまだこれからという印象です。私自身、あらゆる領域でAI活用が本格化するまでにはもう少し時間がかかると思っていました。しかし、先日参加したNRF(全米小売業協会)のイベントで「エージェンティックコマース」の話を聞き、もっとスピーディーに変わるかもしれないと感じました。

これは、小売側の戦略がどうこうというより、消費者側がAIを使って買い物をするのが当たり前になる、という変化です。そうなると、小売業は消費者の変化に合わせるしかない。

赤尾:企業側のAI戦略ありきではなく、消費者側のスピードに対応せざるを得なくなるわけですね。スマートフォンが登場したときのように。

雪元:まさに、新しいテクノロジーが生まれると、まずユーザー側が適応します。売り手である企業は、それに対して売り方や売り場作りを変えていかざるを得ません。その中でAIをどう活用していくか、という考え方になっていくでしょう。

―AIエージェントが普及すると、日本のEC化率も変わってくるでしょうか。

赤尾:近くにお店があっても、準備や行き帰りの移動を含めると30分や1時間はかかります。この時間を、AIエージェントへのオーダーで済ませる世界が来ると、結果的にEC化率が上がる可能性はあると思います。

雪元:その通りで、EC化率は確実に上がっていくでしょう。NRFでのウォルマートとGoogleのセッションでもありましたが、今やGemini(Googleの生成AI)の中で商品検索から決済まで完了してしまう。これが日本で、たとえば各社のネットスーパーと連携するようなことになれば、利用する人がどんどん増えるはずです。特に生活必需品はエージェンティックコマースで済ませる人が出てくるでしょう。

「売った買った」の関係は終わる。メーカーと小売が“チーム”で価値を創る時代

赤尾:メーカーと小売の関係性には、どのような変化を感じますか?

雪元:メーカーも小売のバイヤーも、両者の関係性のあり方を今一度見直しているように感じます。数年前から小売側のPOSデータの開示などが進む中で、「売った」「買った」の関係ではなく、「一緒に消費者が一番喜ぶ商品や棚を作っていこう」というチームで取り組む考え方がすごく増えてきました。

これは企業の大小に関わらず、徐々にシフトしてきていると感じます。その中で重要になるのが「トレードマーケティング」、つまりメーカー側が小売バイヤーのインサイトにしっかりと向き合うことです。

バイヤーはこれまで、自身の担当経験に基づいてMDを考えている方が多かった。しかし、トレードマーケティングの枠組みの中で、メーカーと小売の双方が考えていることを可視化し、「消費者ニーズにどう応えるか」を議論するケースが非常に増えてきた印象です。

赤尾:トレードマーケティングによって、具体的にどのような価値が生まれていますか?

雪元:例えば、ある小売企業では、味付け肉のタレを定期的にコンペ形式でブラッシュアップしています。メーカー任せにするのではなく、小売のバイヤーとメーカーの開発担当者がチームを組み、共同で開発するのです。

メーカーはバイヤーが何を求めているかを深く理解した上で開発に臨めますし、小売側は他社と完全に差別化された、地域で一番おいしい商品を販売して顧客ロイヤリティを高めることができる。まさにWin-Winの関係性が生まれています。

PB比率の高まりはメーカーの経営構造をも変える大きな変化

赤尾:海外ではプライベートブランド(PB)比率が4割、5割というストアもあります。国内、特にドラッグストアなどでは、PB比率は今後どうなっていくでしょうか。また、それはメーカーにどのような影響を与えるでしょう。

雪元:ドラッグストアに限れば、PB比率はどんどん上がっていくでしょう。もちろん、シャンプーやコスメなど、ナショナルブランド(NB)へのロイヤリティが高い商品もあるので一概には言えませんが、基本的にはより高まっていくと見ています。

その中でNBメーカーがどうすべきかというと、これもトレードマーケティングの考え方に回帰します。単にリベートなどで棚を確保するのではなく、バイヤーの意図やインサイトを深く理解し、その店舗に最適な棚作りや商品構成を協力して考えることが鍵になります。

PB比率の上昇は、ドラッグストアだけでなく食品スーパーやホームセンターでも進んでいます。NBメーカーさんにとっては非常に大きな課題です。

赤尾:物価が上がり、消費者はより安いものを求める傾向が強まっています。PBとNBの品質差も昔ほどではなくなりました。そうなると、テレビCM中心のプロモーションなど、従来のNBメーカーの原価構造ではビジネスが合わなくなってくる可能性があります。

これは単なるブランディングの変化にとどまらず、経営構造そのものをダイナミックに変えなければいけない、大きな変化のタイミングだと見ています。

10年後、ユーザー主導の「信頼経済」が生まれるかもしれない

―最後に、10年後のリテール業界はどうなっていると予測されますか。

雪元:10年というスパンで、勢力図がものすごく変わっているかというと、私はそれほどではないと思います。大手資本の優位性は高いでしょうが、ローカルはローカルで、地域に根ざして高い集客力を誇るスーパーであれば、すぐに淘汰されるようなことはないはずです。

ただ、小売のビジネスモデルそのものが、AIによって大きく変わっていくことも明らかです。それが勢力図にどのような影響を及ぼすのか、そこはまだ誰も答えを持ち合わせていないのではないでしょうか。

赤尾:一つ起こりうる可能性があるとすれば、ユーザーが中心になった「信頼経済」の到来です。

雪元:信頼経済、ですか。

赤尾:例えば、食べログの世界がまさにそうですが、ユーザー同士の口コミや評価が購買の決め手になる世界です。新生児のお母さんたちが一番求めている情報は「先輩ママが使ってみて一番良かった紙おむつはどれか」という声だったりします。

こうした「自分と同じ境遇の人が何を良いと言っているか」を重視する人間の本質的な欲求が、テクノロジーと結びついたとき、商品選びのあり方が大きく変わるかもしれません。店頭で何を買うか迷ったとき、常に変動するユーザーの評点が軸になる。SNSも含めたユーザー側の評価を基に、商品開発や仕入れ、ブランディングが行われる世界が来るのではないかと妄想しています。

雪元:ユーザー主導のレーティングで動かすというのは、確かにあるかもしれませんね。特にドラッグストアのように、一つのカテゴリーに無数の商品がある中で、自分に合ったものを探すのは大変です。そこをサポートするサービスやツールが、小売側から出てくる可能性は十分にあります。

赤尾:小売側から出てくると面白いですね。置いてある商品は同じでも、選び方の基準、つまりレーティングの仕組みを持っていることが、お店の差別化要因になる。それは一つの価値だと思います。

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