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新商品やキャンペーンに合わせて、メーカー様が多額の費用をかけ制作するPOPなどの店頭販促物。
しかし、その設置率はわずか2〜3割に落ち込んでいる現実があります。
今回は、FMCGメーカーやラウンダー専門会社で35年にわたって売場づくりに携わってきた、ラウンダー事業部長 兼 ファイブシーユー(以下「5cu」)の秋田晃周に、売場づくりを取り巻く環境の変化や、その先に見据える未来について話を聞きました。
2〜3割しか使われない?!店頭販促の厳しい現実
―売場づくりを長年サポートされてきたお立場から、どのような環境変化を感じていますか。
35年間、ドラッグストアを中心に“売場づくりの現場”に関わってきましたが、メーカー様の販促施策を店頭で実現するという基本的な構造は変わっていません。しかし、実現率は年々深刻化していて、その要因は小売業界の人手不足やローコストオペレーションにあります。
店舗スタッフの本来の業務は接客であり、売場づくりにまで手が回らないのが実情です。商品を棚に並べ、価格を表示するところまでで手一杯。その先の装飾まで手が回らないケースが増えています。
小売企業様によっても方針は異なりますが、かつては自分たちで時間と工数をかけて売場を装飾していた店舗もたくさんありました。しかし、人手不足で次第に「メーカー様から送られてきた販促物を設置する」という形にシフトしていったんです。出来上がったものを設置する方が効率的ですから。
―その結果、メーカー様が用意する販促物の重要性が増したのですね。
はい。メーカー様も「販促物を作れば使ってもらえる」と考え、商品の魅力を知ってほしい、手に取ってほしいと、コストをかけてさまざまな販促物を制作し、店舗に発送します。
一方、忙しい店舗スタッフにとって、五月雨にいろんなメーカー様から送られてくる販促物を全て確認して指定通りに設置するのは、現実的ではない。次第に、本来商品をストックすべきバックヤードに販促物が溜まっていき、使われないまま捨てられてしまう。負のスパイラルに陥っているんです。
一時期は設置率も高かったのですが、それも四半世紀ほど前の話。7割から半分になり、今では2割から3割ぐらいまで落ち込んでいます。つまり、7〜8割が捨てられてしまうということです。
メーカー・小売・卸、分断された業界構造を「つなぐ」のがラウンダーの役割
―人手不足の他にも課題はあるのでしょうか。
はい。現在の店頭販促における課題は、「企画と実行の乖離」です。販促物を企画して作る側であるメーカー様と、それを実行する側である小売様が分断されてしまっているため、売場が完成しないんです。
メーカー様と小売様の間には、物流や商談の取りまとめなどを担う、卸、つまり問屋さんもいますが、売場づくりのサポートまでは行っていません。
2025年時点で日本全国に、ドラッグストアは約24,000店舗、スーパーマーケットも約23,000店舗、コンビニは約56,000店舗あります。メーカー様の営業担当者だけでカバーするのは、到底困難です。
そこで必要なのが、店舗を巡回する「ラウンダー」です。
メーカー様の営業担当者に代わって、商品の陳列や補充、販促物の設置、在庫チェック、店舗スタッフとの関係構築などを推進しています。
―ラウンダーがメーカー様と小売様をつなぐ役割を担っているんですね。
はい。5cuのように店頭の実行支援やラウンダー事業を専門に行う会社が担う役割は大きいと思っています。
ただ、ラウンダーのコストをかけても、ROI(投資対効果)が合わない、アウトソースできるのは一部の大手メーカー様に限られるといった課題も残ります。
業界の“負”を解消する「コストシェアラウンダー」と「たなれぼ」
―業界の課題を解決するために、5cuではどのような取り組みに注力されていますか。
5cuは、単なるラウンダー会社から脱却し、小売企業様・メーカー様・卸売企業様をつなぐインフラになることを目指しています。そのための取り組みが「コストシェアラウンダー」と「たなれぼ」という2つのサービスです。
「コストシェアラウンダー」は、各メーカー様の販促物を物流センターに集約し、私たちが専属のラウンダーとして各社の業務をまとめて請け負う仕組みです。
これにより、メーカー様は個別にラウンダーを手配するコストをシェアでき、店舗側も多くのラウンダーが出入りする手間を省けます。メーカー様と小売様、双方の負担を軽減する仕組みです。
―もう一つの「たなれぼ」はどのような仕組みですか。
「たなれぼ」(写真)は、さらに一歩進んだ仕組みだと考えています。これは、メーカー様からの販促物の支給をやめて、小売様側で販促物を用意する、というものです。
具体的には、小売様側が用意した汎用的な什器(実用新案取得済、特許出願中)を店舗に常設し、メーカー様にはそこに相乗りしてもらうイメージです。1社単独でも、複数社でのコラボレーションも可能です。
ラウンダーは差し替え作業をするだけなので、売場はきちんと作られる。メーカー様側は販促物の制作や発送にかかっている巨額なコストを削減することができます。


―業界の構造そのものを変える試みですね。
はい。今の業界構造のままでは、ラウンダーを使っても設置率は頑張って7割程度。3割の無駄が常に存在します。また、ラウンダー業界自体もコスト競争に陥りがちです。
この構造を変えるためには、業界全体が手を取り合って、収益構造自体を変えていく必要があります。フェズグループだからこそ、この世界の先陣を切ることができると考えています。
経験者のセカンドキャリアを支援し、ラウンダーの品質と地位を向上させる
―ラウンダー業務のクオリティを上げるための施策についてもお聞かせください。
5cuでは、ラウンダーの活動内容をマニュアル化したり、e-ラーニングでの周知、活動に間違いがないかのチェックなど、登録者の方々のサポートを行っています。登録者の方々とコミュニケーションを取り信頼関係を築くことで、稼働率や満足度を高め、業務のクオリティも高めています。
加えて、新しい仕組みを実現していくための施策として、経験豊富な人材の確保にも取り組んでいます。具体的には、メーカー様の営業を経験された方々にセカンドキャリアやサードキャリアとして、活躍していただくことを構想しています。
長年の経験と知識を持つ方々に、自宅近くの店舗で力を発揮してもらうのです。
実際に、メーカー出身の先輩方に何人か入っていただいていますが、やはり品質が高く、細かなことを教えなくても動いてくださるので非常に助かっています。
―社会的にも意義のある取り組みですね。
ラウンダーはどうしても補助的な仕事と見られがちですが、私はその社会的地位を向上させたい。そのためには、まず我々が価格競争から脱却し、適正な利益を確保して働く人たちに還元する仕組みが必要です。
この業界構造を変えることが、今後3年ほどで我々がやらなければならないことだと考えています。

「人」の力は不可欠。売場づくりの未来とは
―AIやロボット技術が進化する中で、売場づくりはどのように変わっていくとお考えですか。
一部のコンビニでは、先行して自動化の取り組みが進んでいます。ただ、アイテム数や店舗面積が限定的だからこそ、と思っています。ドラッグストアの場合、2〜3万SKU(在庫最小管理単位)もの商品を扱っており、商品の大きさも様々です。これらを全て自動化するのは容易ではありません。
在庫管理や受発注などの自動化は進んでいくと想像されますが、品出しまでロボットが担うようになるのは、まだ10年程度かかるのではないかと感じています。まずは、欠品しやすい日用品や食品の補充など、一部の自動化からでしょうか。
医薬品や化粧品のようにカウンセリングが必要な領域も自動化されると思いますが、高齢化も進む中、お客様・患者様に寄り添うコミュニケーションの価値は残るでしょう。ですから当面は、まだ人の力が必要不可欠だと考えています。
―10年後を見据えたとき、売場づくりをどう変えていきたいですか。
人手不足や原材料費・燃料費の高騰・・・、売場づくりの現場は変わらなければなりません。そのために、フェズは卸売大手のPALTAC様と業務提携するなど、変革の構想を進めています。
今、店頭の情報で欠けているのは、「なぜその商品が売れたのか」という部分です。データで「何が売れたか」はわかりますが、「どういう状態の売場で売れたのか」という因果関係がわかっていません。
例えば、ある商品はPOPがなくても売れるのかもしれない。それなら無駄な販促費はかけず、苦戦している他のブランドに予算を回すべきです。逆に、ある店舗のスタッフさんが作った手書きのPOPで商品がすごく売れたなら、その言葉をすぐに他の店舗にも展開すべきです。
「売れた理由」を可視化し、次のマーケティング施策に活かしていく。その一翼を担いたいですね。どんなに構想を練っても、最後にそれを現場に落とし込むのは「人」です。我々は現場に一番近いところで、泥臭い実行を担いながら、業界全体の未来を可視化していく役割を果たしたいと思っています。


